23 晴雨計 あいゆー山の会

新潟日報(夕刊) 2010年(平成22年)5月6日(木曜日)
 晴雨計 あいゆ−山の会

 里の桜がようやく満開を迎えた日「新潟あいゆ−山の皆さんと国上山に登った。この会は、目が不自由なためアウトドアをあきらめていた人と一緒に登山やハイキングを楽しもうと、10年前に設立された。「あい」はEye(目)、I(わたし)、愛(Love)に通じ、「ゆー」はYou(あなた)、友(とも)、優(やさしい)に通じる。今回で44回を数える山行で、昨年は北アルプス燕岳(2,763b)にも登った実績がある。わたしも今年から仲間に加えてもらった。

 ぬかるみあり岩場あり、春の足慣らしに適して低山とはいえ、しばらく歩けば汗ばみ息の弾む山道である。その登り下りを、目の見える人(晴眼者)のリュックサックに付けたガイドローブを目の不自由な人(視障者)が握り、ペアで乗り越えていく。
 「階段です」「約30センチの倒れた木の枝を跨ぎます」「右側は崖で落ち込んでいます」と適切な声がけでガイドしながら進む。木の根が複雑に浮き出て、岩や木で整備された段差も高低があり踏み間違えれば捻挫しそうな道を、二人のコンビはさりげなく乗り越えていく。初心者のわたしには驚きの連続である。

 カタクリ、キクザキイチゲ、雪割草と春の可憐な草花が足元を彩る。タムシバがすんなりした枝先に白いつぼみを膨らませ、春の女神と呼ばれるギフチョウがひらひらと舞っている。目で見る春を言葉などで伝えながら山道を進む。ふと「ウグイス、鳴き声が未熟だなあ」と言われて耳を澄ますと、空の高いところにはいろいろな鳥のさえずり。気づかなかった。
 夫婦でよく山登りをするが、この日差しの柔らかさや空に満ちている小鳥の歌声、杉木立のにおいなど、こんなに瑞々しく感じ取ることはなかった。

 視覚情報の不足をほかの鋭敏な感覚が豊かに補い、ものの神髄をとらえていく能力をすばらしいと思った。春を謳歌する大自然を体全体で満喫し今年の春は深く豊かにわたしの体にしみた。助け合いながらお互いに楽しみを大きくし、友情を育んでいくこの会に入ってよかった。

小林毅夫(民間教育文化研究所長・上越市)

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